飲食業において取り扱いに注意が必要な食材の一つが「肉」である。
菌が繁殖しやすく、食中毒の原因になりやすいからだ。
仕込みの段階でいろんなものに触れないように注意しなければならない。
食中毒は、食品や飲料に含まれる病原菌や有害物質が原因で起こる健康障害の総称です。
飲食業では、食中毒を防ぐことが最優先の課題であり、正しい知識と予防策が求められます。
まずは食中毒の概要、原因、症状から、対策について詳しく説明します。
食中毒の概要
定義
- 食中毒: 食品や水を介して摂取された微生物、ウイルス、寄生虫、化学物質、毒素などが原因で発生する急性の健康障害。
主な発生場所
- 飲食店、学校給食、家庭、宿泊施設、集団施設(病院・介護施設など)。
食中毒の種類と原因
食中毒は、原因によって以下の4つに分類されます。
(1) 細菌性食中毒
原因: 病原菌が食品内で増殖したり、毒素を生成することで発生。
- 主な菌
- サルモネラ菌: 鶏卵や鶏肉、未加熱の乳製品など。
- 腸管出血性大腸菌(O157など): 生肉、未消毒の飲料水、生野菜。
- カンピロバクター: 鶏肉の生食や不十分な加熱。
- ボツリヌス菌: 密閉容器内で発生しやすい(例: 缶詰や真空パック食品)。
(2) ウイルス性食中毒
原因: ウイルスが食品や飲料、汚染された手指を介して体内に侵入。
- 主なウイルス
- ノロウイルス: 生牡蠣などの二枚貝や、感染者の手を介した食品。
- A型肝炎ウイルス: 汚染された水や食品。
(3) 化学性食中毒
原因: 有害な化学物質の摂取。
- 例
- 農薬や洗剤の混入。
- ヒスタミン中毒(魚の腐敗による自然毒)。
- 鉛、カドミウムなどの金属汚染。
(4) 自然毒による食中毒
原因: 自然界に存在する毒物の摂取。
- 例
- 毒キノコやフグ毒(テトロドトキシン)。
- ジャガイモの芽に含まれるソラニン。
食中毒の主な症状
- 消化器系の症状
- 嘔吐、下痢、腹痛、食欲不振。
- 全身症状
- 発熱、倦怠感、頭痛。
- 重篤な場合
- 血便、腎不全(例: 腸管出血性大腸菌による溶血性尿毒症症候群)。
食中毒の発生条件
細菌性食中毒の場合の発生条件
- 食品衛生の3原則(増殖を防ぐ)
- 菌をつけない:
- 汚染された手、調理器具から食品への菌移動を防ぐ。
- 菌を増やさない:
- 適切な温度管理(低温保存や早期消費)。
- 菌を死滅させる:
- 十分な加熱(中心温度75℃以上で1分以上)。
- 菌をつけない:
食中毒の予防策
飲食業や家庭での予防の基本は、以下の5つです。
(1) 手洗いの徹底
- 石鹸を使い、手指を30秒以上洗浄。
- 調理前、トイレ後、生肉や生魚に触れた後は必ず手を洗う。
(2) 食材の適切な管理
- 冷蔵保存: 生鮮食品は0~4℃で保存。
- 冷凍保存: -18℃以下で保存。
- 解凍は冷蔵庫内または流水を使用し、常温放置は避ける。
(3) 調理器具の衛生管理
- 包丁、まな板、ボウルなどは食材ごとに分ける。
- 使用後は洗浄・殺菌し、乾燥させる。
(4) 加熱調理
- 生肉、生魚、卵は十分に加熱(中心温度75℃以上)。
- 再加熱する場合も、しっかり温める。
(5) 感染者の隔離
- ノロウイルスなどの感染者が調理作業を行うことを避ける。
- 感染者が触れたものは次亜塩素酸ナトリウムで消毒。
飲食店での管理ポイント
(1) HACCPの導入
- HACCP(危害要因分析重要管理点)は、食品の安全を確保するための管理手法。
- 食材の受け取りから提供までの工程を細かく管理。
(2) 定期的な衛生チェック
- 冷蔵庫や冷凍庫の温度確認。
- 従業員の健康チェック(体調不良者の作業禁止)。
- 調理場の清掃と消毒。
(3) 食材のトレーサビリティ
- 食材の仕入れ先を明確にし、製造日・賞味期限を把握。
食中毒が発生した場合の対応
(1) 初期対応
- 食中毒の疑いがある場合、すぐに飲食物の提供を停止。
- 症状が出たお客様への迅速な対応(医療機関への案内など)。
(2) 保健所への報告
- 食中毒の可能性がある場合は、保健所に速やかに報告。
(3) 原因調査
- 残った食品や食材を保管し、原因特定に協力。
食中毒まとめ
食中毒は、飲食業における最も重要なリスク管理項目の一つです。正しい食品の取り扱いと衛生管理を徹底することで、発生リスクを大幅に軽減できます。また、従業員全員が知識を共有し、日常業務に反映することが不可欠です。食中毒ゼロを目指し、日々の取り組みを強化しましょう。
飲食業での調理における肉の取り扱いは、安全性、品質、衛生を保つために特に重要です。不適切な取り扱いは、食中毒や顧客の健康被害につながるリスクがあるため、正しい知識と技術が求められます。
次に肉の取り扱いに関する詳細をまとめました。
肉の取り扱い
食中毒を理解した上で肉の取り扱いについて紹介していきます。
購入・受け取り時のポイント
- 品質確認
- 肉の色が新鮮か確認する(牛肉は鮮やかな赤色、鶏肉は淡いピンク色など)。
- 臭いや異常な液体がないか確認。
- 表面に粘りや変色がないかをチェック。
- 温度管理
- 冷蔵品は0~4℃、冷凍品は-18℃以下で配送されているか確認。
- 配達時に温度計を使用して正しい温度が保たれているかを確認。
保存方法
(1) 冷蔵保存
- 温度: 0~4℃で保存。
- ラップや密閉容器に入れて乾燥を防ぎ、冷蔵庫内での他の食材への臭い移りを防ぐ。
- 保存期間:
- 生の肉: 2~3日以内に使用。
- 下味をつけた肉: 1~2日以内。
(2) 冷凍保存
- 温度: -18℃以下。
- 保存前に小分けし、1回分ずつラップで包みジップロックに入れる。
- 保存期間:
- 冷凍牛肉や豚肉: 約1か月。
- 冷凍鶏肉: 約2週間。
- 冷凍焼けを防ぐため、空気をしっかり抜いて密閉する。
(3) 肉と他の食材の分離
- 生肉を他の食材(特に生で食べる野菜や果物)と接触させない。
- 冷蔵庫では、生肉を下段に保管し、液体が漏れた場合でも他の食材を汚染しないようにする。
調理前の準備
(1) 解凍方法
- 冷蔵解凍: 冷蔵庫でゆっくり解凍(最も安全)。
- 流水解凍: ビニール袋に入れ、流水で解凍(早く解凍できる)。
- 電子レンジ解凍: 急ぎの場合に使用。ただし加熱ムラに注意。
- NG行為: 室温で放置して解凍することは避ける。細菌が増殖しやすいため。
(2) 下処理
- 表面を洗わない(洗うことで菌が周囲に飛散する可能性がある)。
- キッチンペーパーで表面の水分を軽く拭き取る。
- 包丁やまな板、ボウルは専用のものを使用し、他の食材と使い分ける。
調理時の注意点
(1) 温度管理
- 肉を十分に加熱し、内部温度を確認する。
- 鶏肉: 75℃以上。
- 牛肉・豚肉(挽肉含む): 70℃以上。
- ローストやステーキなど、中心温度が低い仕上がりの場合も、外側はしっかり加熱する。
(2) クロスコンタミネーション防止
- 生肉に触れた手や調理器具で他の食材を扱わない。
- 調理中、使い終わった調理器具はすぐに洗浄・消毒する。
(3) 使用する油や調味料
- 調理方法や肉の種類に応じて適切な油や調味料を選ぶ。
- 例: 鶏肉には柑橘系の調味料が合い、脂っぽさを軽減。
調理後の管理
(1) 残った肉料理の保存
- 調理後2時間以内に冷蔵庫または冷凍庫に保存する。
- 温度: 冷蔵なら0~4℃、冷凍なら-18℃以下。
- 再加熱時は中心温度が75℃以上になるように加熱。
(2) 再加熱時の注意
- 電子レンジで温める場合、加熱ムラが出ないように途中でかき混ぜる。
- 料理の風味や食感を損なわないため、できるだけ早く食べる。
食中毒防止のポイント
肉にはカンピロバクターやサルモネラ菌、**腸管出血性大腸菌(O157など)**が存在する可能性があるため、以下を徹底します。
- 生肉を直接触った後は必ず手洗い。
- 専用の器具を使用: 包丁、まな板、トングなどは生肉専用を用意。
- 加熱不足を防ぐ: 内部温度を測定する調理用温度計を活用する。
- 調理場の清掃・消毒を徹底。
肉の種類ごとの注意点
(1) 牛肉
- 表面に菌が付着することが多いため、ステーキなどの場合でも表面をしっかり焼く。
- 挽肉は細菌が内部まで入り込むため、中心部まで十分加熱。
(2) 豚肉
- 加熱が必須: 豚肉には寄生虫(トキソプラズマ)が存在する可能性があるため、中心部までしっかり火を通す。
- 生ハムやベーコンなど加工肉は保存時の塩分に注意。
(3) 鶏肉
- 最も食中毒のリスクが高い食材の一つ。特にカンピロバクターに注意。
- 必ず中心温度75℃以上で加熱。
従業員への教育と管理
- 定期的な衛生教育: 食材の取り扱いや衛生管理の知識を定期的に学ぶ。
- 手洗いの徹底: 調理前後、トイレ後などには必ず手洗いを行う。
- 健康管理: 発熱や下痢のあるスタッフは調理を行わない。
まとめ
肉の取り扱いでは、
「衛生管理」「温度管理」「適切な調理法」
が最も重要です。特に食中毒を防ぐために、従業員全員がルールを徹底し、日々の業務に反映させることが不可欠です。これらを正しく守ることで、安全でおいしい料理を提供できます。
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